
女のいない男たち (文春文庫)
村上春樹
文藝春秋 / 2014-04-20
この本について
人と関わるとき、自分の気持ちがどこにあるのかよくわからなくなる瞬間ってありませんか。相手の真意も、自分の本音も、霧みたいに掴めないまま日々が流れていく。知ろうとすると苦しくて、知らないままでいるのも不安で、その狭間で立ち止まってしまうようなときがあります。 『女のいない男たち』を読んで胸に残るのは、登場人物たちがその「曖昧さ」と真正面から向き合っていることでした。知ることは痛みを伴うけれど、それでも知らなければ前に進めないという姿勢。演技のように続けてしまう関係のしんどさ。そして、他人の心は覗き込めなくても、自分の心だけは丁寧に見つめていけるという静かな事実。読んでいるうちに、自分の中でも置き去りにしていた感情の位置が少しだけ輪郭を持ち始める感じがありました。 恋愛の話というより、人と人がどうやって距離を測り、自分という存在と折り合いをつけていくのかを描いた短編集です。特別な答えが提示されるわけではないけれど、霧の中に光がひと筋入るような感覚がある。曖昧さと共存するしかない人間関係の重さを、無理に軽くもしないし、大げさにも扱わない。その距離感がちょうどいいんです。 自分の感情の置き場がよくわからなくなったとき、人との距離を測り直したいとき、静かに効いてくる本だと思います。こんな人に刺さるのは、「他人よりも、自分の心のほうが読みにくい」と感じている人です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの21%が集中しています。
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