
この本について
人の噂や情報に触れるたびに、「自分はどこまで当事者なんだろう」とモヤッとすることがあります。気遣っているつもりなのに、誰かを傷つけているかもしれない。興味本位で見てしまったニュースに、後からざらついた感覚だけが残る。そういう“言葉を扱う側のしんどさ”って、仕事でも日常でもずっとつきまといます。 『ファイア・ドーム 下』を読むと、その正体が少し見えてきます。登場人物たちの迷いは、どれも他人事ではないからです。たとえば「負の言葉一つに足がすくむ感覚」や、「真実を届けても、受け手の土壌がなければ届かない」という無力さ。どれも、私たちが日々のコミュニケーションの中で経験している感覚と地続きなんですよね。そしてこの物語が丁寧なのは、誰かを裁くのではなく、“自分たちもまた加担者だった”という視点を避けないところです。噂に反応してしまう心理や、知りすぎることで見えなくなるものまで、読んでいる側も一緒に考えざるを得なくなります。 決してスカッとする話ではないのに、読み終えると少しだけ世界の見え方が変わります。噂に飲み込まれる側の怖さと、噂を生む側の弱さ。その両方を直視した上で、「それでも言葉を使って誰かとつながろうとする」という姿勢に、静かに背筋を伸ばされました。 人の好奇心や噂との距離感にモヤモヤしている人に刺さる一冊です。
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