
かがみの孤城
辻村深月
集英社 / 2022-05-18
この本について
学校や職場に向かう朝、「行きたくない理由がはっきり説明できないまま、でも胸だけが重い」みたいな日ってありますよね。人間関係に置いていかれる不安とか、行かなかった一日分だけ距離が開いていく感じとか、理由を聞かれるほど言葉が詰まってしまうあの感覚。抜粋を見ていると、まさにそこに刺さって保存している人が多いように思いました。 『かがみの孤城』は、そういうモヤモヤを無理に整理させようとせず、まず「そう感じるのはあなた一人じゃない」と地に足をつけて示してくれます。たとえば、行けなかった日の積み重ねが不安になる気持ちや、大人の“正しさ”が時に息苦しくなる瞬間、誰かの世界の中で自分だけ弱い立場に置かれてしまう構造。読んでいると、そのひとつひとつが物語の中にそのまま置かれていて、自分の感情を無理に否定しなくていいんだと少しだけ楽になります。 そして、この物語が効くのは「学校に行くための勇気」を押しつけるからではなく、「行く場所を“学校”としてじゃなく、会いたい誰かのいる場所として見直す」という小さな視点の転換をそっと渡してくれるからだと思います。行動が劇的に変わらなくても、世界を見る角度が変わるだけで、翌日の息苦しさがすこし薄くなる。私はそこで初めて、自分のペースで人とつながっていいんだと腑に落ちました。 こんな人に刺さると思います。自分の足が止まってしまった理由を、まだ誰にも説明できずにいる人。私もそうだったので、変に前向きにならなくていいまま読める物語として、そっと置いておきます。
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ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの19%が集中しています。
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