
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)
森 絵都
文藝春秋 / 2009-04-10
この本について
なんとなく「もうこれ以上どうにもならないな」と思う瞬間ってありますよね。人間関係でも仕事でも、悪化する予感ばかりに疲れて、気づけば感情の置き場をなくしてしまう。私もそういう時期に、この本を読むと言葉にならない部分を代わりに拾ってもらえたような感覚がありました。 森絵都さんの『風に舞いあがるビニールシート』は、劇的に救ってくれるタイプの物語ではないです。でも、登場人物たちが抱えている「誰にも説明しきれない大切なもの」が、そのままの形で置かれている。たとえば、最悪の状況の中にかすかな安らぎを見つけてしまう弱さとか、愛しきれなかった日々の記憶にいまだ縛られてしまう自分へのとまどいとか、相手との距離を確かめたくて思わず手を伸ばしてしまう衝動とか。読者が保存した抜粋を見ても、そういう“誰にも言っていないけれど自分には刺さる部分”に反応しているのが伝わってきます。 この本が効くのは、無理に前向きにならなくていいところです。大切なものが人それぞれ違うように、向き合い方も違う。だからこそ、彼らの揺れ方を追っていると、「自分の揺れ方を否定しなくていいんだ」と少しだけ呼吸が楽になる。もうひとつは、忘れていくことへの恐怖や、手放せない記憶の重さを、そのままの質量で描いてくれるところ。誰かを思い続けることの痛みと温度を、誤魔化さずに扱っているのが救いになります。 こんな人に刺さると思います。強がりのまま日々を続けているけれど、本当は誰かとの距離や記憶の重さにまだ立ち止まってしまう人。私自身もその一人でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの40%が集中しています。
読書の順序
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