
小説 すずめの戸締まり (角川文庫)
新海 誠
この本について
人と別れたり、急に日常が揺らいだときに、「生きるってこんなに心細かったっけ」と思う瞬間があります。状況はいつも動いていて、自分ではどうにもできないものも多い。分かっているのに、気持ちだけが追いつかないまま残されることってありますよね。 『小説 すずめの戸締まり』の抜粋を見ていると、読者が惹かれているのは“命はかりそめだと知りながらも、それでも願わずにいられない”という、あのどうしようもない感情に寄り添ってくれる部分なんだと思います。死が隣にあると分かっている世界で、それでも「いまもう一時だけ」と祈ってしまう。その弱さや切実さを、そのまま受け止めてくれる物語です。 もうひとつは、宮崎弁や病院の描写のような、ものすごく具体的な土地や身体感覚。ぐるりと風がなびく感じや、病院のカフェがまだ開いていない早朝の空気。自分の生活にもありそうな“少しだけ不安が混ざった朝”をそのまま映すようで、読みながらふっと現実の手触りを取り戻せます。非日常と日常の境目に立たされているときほど、こういう細部が心を落ち着かせてくれるんですよね。 そしてもう一つ印象的なのは、母親からの長文メッセージの場面。言い方は雑に見えるのに、その裏には不器用な心配がある。守られたいわけじゃないけれど、誰かが気にかけてくれている事実だけは素直に響く、あの感じ。自分も誰かとすれ違いながら生きているんだなと、少しだけ俯瞰できます。 こんな人に刺さると思います。強くなりたいわけじゃないけれど、いま揺れている気持ちのまま進みたい人。物語に救われるというより、「揺れててもいいんだ」と静かに背中を押してほしいときに合う一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの67%が集中しています。
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