
平均思考は捨てなさい──出る杭を伸ばす個の科学 (早川書房)
トッド ローズ and 小坂 恵理
この本について
「平均より上にいたい」「みんなとずれたくない」。仕事でも子育てでも、なんとなくそういう圧に振り回されてしまう瞬間ってありますよね。自分が遅れているのか、それとも方向が違うだけなのか。その区別がつかないまま焦ってしまう、あの感じです。 この本が面白いのは、そういう“平均への同調”を否定するんじゃなくて、「そもそも平均って個人を測れる指標じゃないよね」というところから話が始まるところです。抜粋を見ても、読者が反応しているのは「自分が目撃しているのは一面にすぎない」「人間には総合点なんてない」といった、評価軸そのものへの疑問だと思います。だからこの本は、努力の方向を変えたり、生き方を劇的に変えたりというよりも、まず“比較の前提を疑う”という立ち止まり方をくれるんですよね。 読んでいて特に効くのは、ひとつひとつの能力にも必ずコンテクストがあるという話です。IQが高いから全部できるわけじゃないし、逆にどこかで苦労しているのには必ず状況の組み合わせがある。これに気づくと、自分や誰かを一発で評価しようとする癖が少し落ち着きます。もう一つは、「ゴールへの道筋は人によって違う」という当たり前だけど忘れがちな前提が、科学的な話として描かれているところ。遠回りしているように見える行動にも理由がある、と言われるだけでだいぶ気が楽になります。 平均との比較で自分の位置を確かめがちな人、もしくは周りを評価する目線がしんどくなってきた人には、静かに効く本だと思います。
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