
ツナグ(新潮文庫)
辻村深月
新潮社 / 2012-09-01
この本について
人の気持ちに踏み込みたいのに怖くて、つい一歩引いてしまうことってありませんか。誰かを失った友人にどう声をかければいいのか分からなかったり、自分の弱さを認めるのが下手で、謝ることで全部済ませようとしてしまったり。強がっているつもりはなくても、うまく気持ちを扱えないまま日常だけが進んでいく感じです。 『ツナグ』を読んでいると、そんな「感情の置き場所のなさ」にそっと光を当てられているようでした。登場人物が抱える喪失や後悔は、派手なドラマではなく、実際に自分の生活の中でも起こりうる質感があります。誰かを亡くした時の「まだどこかで生きてる気がして探してしまう感じ」や、「謝れば全部片付くと思ってしまう癖」、そして「自分勝手だと分かっているのに誰かに甘えたくなる瞬間」。抜粋を見ると、読者が刺さっているのもまさにそこなんだと思います。 この本が効くのは、感情を整理するために“答え”をくれるからではなく、曖昧なまま抱えてきた気持ちに形を与えてくれるからです。誰かの死をどう背負うのか、残された者のわがままさをどう受け止めるのか、そして「知らない」と認める難しさ。読みながら、自分の中に長く沈んでいたものを少しずつ引き上げてくれる感覚があります。 人間関係の距離感に悩んでいる人、過去の出来事がまだ胸のどこかに残っている人には、特に静かに効いてくるはずです。無理に前向きにさせようとする話ではないのに、読み終わると、自分の中の痛みを少しだけ柔らかく扱えるようになる本でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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