
かがみの孤城 上 (ポプラ文庫 日本文学)
辻村深月 and 禅之助
ポプラ社 / 2021-03-05
この本について
学校や職場で「本当の気持ちを言うと場が壊れそうで黙ってしまう」とか、「相手に悪気はないと分かっているのに、どこかで“察してほしい”と思ってしまう」みたいな、うまく言葉にできないモヤモヤってありますよね。自分でも整理しきれない気持ちほど、扱いに困るものはないなとよく思います。 『かがみの孤城』の抜粋を見ていると、多くの人が保存しているのは“矛盾した気持ちも、その瞬間の自分として正しい”という部分や、“みんな言わないだけで、同じことを感じている”というところでした。たぶん、自分の弱さや不器用さを否定しないでくれる視点に、ほんの少し救われるからなんじゃないかと思います。この物語は、学校に行けない七人の子どもたちが集まる話ですが、そこに描かれる“距離の取り方”や“わかってほしいのに言えないあの感じ”は、大人になってからこそ刺さるところがあるはずです。 特に効くと思うのは、まず「自分の感情をどれか一つにまとめなくていい」という視点。強がりも本音も同時にある状態を、物語がそのまま肯定してくれます。さらに、「自分だけが外れているように見えても、裏側では同じ痛みを持つ人がいる」という安心感も、この作品の大きな救いどころでした。そしてもう一つ、子どもたちが大人の“正しさ”に対して距離を置こうとする描写が、決めつけられるのが苦手な人には静かに効きます。 こんな人に刺さると思います。自分の気持ちをきちんと言えないまま、大人として毎日を続けている感覚がある人。
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