
オーデュボンの祈り(新潮文庫)
伊坂幸太郎
新潮社 / 2003-12-01
この本について
日々ちゃんとやっているつもりなのに、「自分の立っている場所って本当にこれで合ってるのか」とふと立ち止まってしまう瞬間があります。前に進んでいるようで進んでいない気もするし、かといって大きく動く勇気もない。そんな宙ぶらりんな時間が続くと、世界の“正しさ”みたいなものがどんどん曖昧になってきます。 『オーデュボンの祈り』を読んでいて思ったのは、この作品はその曖昧さと付き合うための視点を、物語の形でそっと手渡してくれるということです。たとえば、島の人たちの“夜景”の捉え方が全然違う場面。自分の基準が世界の基準じゃないと気づかされるあの感じは、仕事でも人間関係でもよくある戸惑いにそのまま重なります。あるいは、狂気と受容がごく近くにあるという言葉。頑張りすぎて心が折れそうなとき、踏ん張ることと委ねることの境界がだんだん見えなくなっていくあの感覚を、物語が代わりに言語化してくれるようでした。そして何より、“先のことなんて知らないほうが楽しい”という一言が、この世界には制御できないもののほうが多いという現実を、少しだけ柔らかく受け入れさせてくれます。 物語としてはもちろん不思議で、現実味のない設定も多いのに、読後に残るのはむしろ自分の生活の手触りに近い感覚でした。決めつけでも前向き強制でもなく、世界の揺らぎにうまく身を置く練習をさせてもらったような気がします。 こんな人に刺さる本です。 “正しい生き方”という言葉に少し疲れてしまった人。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの39%が集中しています。
読書の順序
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