
さよならジャバウォック
伊坂幸太郎
双葉社
この本について
人間関係で勝手に落ち込んだり、誰かの言動に振り回されて「なんでこうなるんだろ」と思う時ってありますよね。相手の性格なのか、環境なのか、それとも自分の受け止め方の問題なのか。考え始めると堂々巡りになって、正しさも優しさもよく分からなくなる、みたいな。 『さよならジャバウォック』を読んでいて強く感じたのは、人の行動に“理由がほしい気持ち”をそっと扱ってくれる物語だということです。たとえば「他人と過去は変えられない。でも自分と未来は変えられる」という言葉は、状況を切り開くためというより、まず“自分の力が及ばないもの”を認めるためにあるように思えました。また、テストステロンや種の本能の話が何度も出てきますが、「人間の残酷さをホルモンのせいにしたい」という揺れは、多くの人が心のどこかで抱えているものだと思います。責任を押し付けたい気持ちと、それでは片付かない現実。その間で揺れている人物たちに、自分の影を見ました。 さらに印象的だったのは、「個としての尊厳」と「集団としての本能」が同時に存在してしまうというややこしさを、物語全体が静かに描いているところです。「敵だと思えば残忍になれる」という指摘は耳が痛いけれど、目をそらせない。自分も同じ構造の中にいると理解すると、誰かを単純に断罪する気持ちが少しだけ落ち着く気がしました。 自分や他人を“分かったつもり”になるとしんどくなる人。そんな人にこそ、この物語のゆらぎがじんわり効くと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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