
ゴールデンスランバー(新潮文庫)
伊坂幸太郎
文藝春秋 / 2010-12-01
この本について
最近、何かに追われているような気分になることが増えました。仕事の段取りも、ニュースの流れも、自分の意思とは関係なく動いていくような感じがして、ふと「これ、ちゃんと自分の人生やれてるのかな」と不安になる時があります。周りを気にしながら慌てて走っているだけで、振り返る余裕がないまま日々が流れていくあの感覚です。 『ゴールデンスランバー』を読んで思い出したのは、そういう“どうしようもなさ”の中でも、確かに自分を支えてくれる何かがあったということでした。理不尽に巻き込まれる主人公の姿には、人がどれだけ簡単に誤解され、押し流されるかがリアルに描かれています。でも、その中で浮かび上がるのは、昔の友人からの小さな気配だったり、誰かが自分を信じるという静かな確信だったり、本人も気づかないところで残り続けていた関係の力でした。ああ、自分の“帰る場所”って、こういう些細なやり取りの積み重ねだったんだよな、と腹の奥がじんわりする感じがあります。 それに、社会の大きな仕組みに対して無力さを覚える場面も多いのに、登場人物たちはどこか笑ったり、くだらない会話を続けたりしていて、その軽さが妙に救いになるんですよね。重いテーマなのに、ふと呼吸が楽になる瞬間がある。そういう“人間らしさ”の描き方は、この作品ならではだと思います。 昔の自分との距離をふと感じてしまう人、社会のスピードに置いていかれている気がする人には、静かに刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
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