
この本について
人の噂に巻き込まれたとき、どこまで説明しても届かない感じとか、自分は悪意なんてないのに誰かを傷つけていたかもしれない…と後から気づいて落ち込むことってありませんか。自分でも理由がはっきりしないまま、胸の奥にずっと残り続けるモヤモヤです。 『ファイア・ドーム 上』は、そのモヤモヤを正面から見せつけてくる物語でした。噂の軽さに対して、噂を浴びせられる側の重さがあまりにも対照的で、読んでいて何度も足が止まります。やっていないことを証明できない苦しさとか、誰も悪意を持っていないのに、結果的に傷つく人だけが増えていく地方社会の空気とか、自分も加害にも被害にもなり得る不安がじわじわ迫ってきます。 特に刺さったのは、誰も直接は問いかけてこないのに、外側からゆっくり声を奪われていく人の孤独でした。こちら側から見れば「そんなつもりはなかった」と言えてしまうけれど、言われた側は日常そのものを奪われていく。あの温度差は、実社会でも何度か心当たりがあります。何気なく話した「知ってるよ」の一言すら、人を追い詰める材料になってしまうことがあるのだと、あらためて身につまされました。 感情を煽るタイプの作品ではないですが、噂や誤解に振り回されやすい人や、誰かを傷つけたかもしれない不安を抱えがちな人には、深く届くと思います。今の自分の立ち位置を、少し静かに振り返らせてくれる一冊でした。
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