
この本について
人と深く関わるほど、こちらの手が届かない場所で起きる出来事に無力さを覚えることがあります。自分が動けるのはせいぜい身の回りだけで、世界の理不尽には太刀打ちできない。そう割り切ってみても、どこかで割り切りきれずに引っかかる。そんな時期に出会うと、じわりと効いてくるのが『さよなら妖精』でした。 この物語の人物たちは、現実と理想のあいだで揺れ続けます。自分の畑だけ耕して生きていくのが性に合っていると思いながら、目の前の誰かの事情にどうしても心が動いてしまう。忘れたい記憶に蓋をしたいはずなのに、納得できないものの正体を知りたい衝動が消えない。そんな揺れ方があまりに人間らしくて、読んでいるこちらの迷いと自然に重なるんですよね。誰かに話すことで少し軽くなる、という描写も、日常で感じる感情の処理そのままだと思いました。 大きな答えをくれる物語ではないけれど、自分の足で一歩進むとはどういう感覚なのかを、別れややりきれなさを通して静かに教えてくれる一冊です。理不尽さに心がざわつく時や、前に進む理由をうまく言語化できない時に、そっと寄り添ってくれます。 こんな人に刺さると思います。自分の無力さと、それでも何かを選びたい気持ちのあいだで揺れている人。
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