
私家版 差別語辞典(新潮選書)
上原 善広
新潮社 / 2011-05-25
この本について
差別について語るとき、どうしても「正しい言い方」や「配慮」に意識が向きすぎて、肝心の“現実で何が起きているのか”が見えなくなることがあります。建前としては平等だと言われても、心のどこかに残る違和感や、話題にするときの居心地の悪さ。多くの人が感じているそのモヤモヤに、この本はかなり正面から触れてきます。 抜粋を読むと、歴史的な呼称の変遷が単なる言い換えではなく、時代ごとの力関係や差別の形の変化と強く結びついていることがよく分かります。差別を押し殺した結果として表に出てくる“言葉の取り繕い”の空虚さや、そこにある痛みまで丁寧に追う本なので、綺麗事では説明できない部分に気づかされます。そして、過去の制度や呼称の背景を知ることで、今の社会でなぜ同じような問題が繰り返されるのか、自分の中の視点が少しずつ変わっていきます。 さらに、扱われるのは「歴史用語の整理」だけではなく、その裏にある生活者の感情や葛藤です。涙をこぼす妻の姿や、融和運動の複雑な空気など、抽象論ではなく“人の生活”として差別が描かれているからこそ、読者の刺さった部分が多かったのだと思います。建前ではなく、実際にどう感じられていたのかを知れるのは、この本の大きな強みです。 タブーや言い換えに振り回されて「何が本質なのか分からなくなっている人」に刺さる本です。歴史として距離を置くのではなく、自分の足元の問題として考え直すきっかけになります。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの77%が集中しています。
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