
ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)
小川 哲
早川書房 / 2019-12-04
この本について
日常で「なんでこんなに選択肢に振り回されるんだろう」とか、「正しいはずの仕組みが全然機能していない気がする」とか、じわっとした不安に飲まれる瞬間ってありませんか。自分がどこに立って、どこへ向かっているのかよくわからなくなるあの感じです。 『ゲームの王国 下』を読んでいると、そのモヤモヤに少しだけ輪郭が出ます。たとえば、ルールそのものが人を作る構造。個人の意思や善悪より、そもそも「違反できない状態」を作るほうが社会は動いてしまうという視点。自分の努力とか性格の問題だと思っていたことの一部が、実は環境設計の話なんじゃないかと気づかされます。また、記憶が「断片と現在の自分の継ぎ合わせ」でできているという描写が、過去に縛られている感覚を少しゆるめてくれる。思い出の精度そのものが揺らぐと、自分のストーリーをどう捉え直せばいいのかが変わってきます。 さらに、正しさや答えを求めて動き続けるほど暗闇が深くなるという台詞があって、これが妙に刺さります。私たちが抱える「正しい道を選ばなきゃ」という焦りを、いったん横へ置いてくれるような感覚があります。もっとも険しい道を選んで書き進めたという作者の姿勢も含めて、答えよりも「選び続けること」そのものを考えさせられます。 こういう本が刺さるのは、正しさに疲れてしまった人や、世界の仕組みと自分の感情のズレに戸惑っている人だと思います。読後に急に前向きになるわけではないけれど、暗闇の温度が少し変わるような一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの15%が集中しています。
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