
不毛地帯 第五巻(新潮文庫)
山崎 豊子
新潮社 / 2009-03-15
この本について
仕事で決断を迫られたり、組織の中で誰かの思惑に巻き込まれたりして、「正しさ」と「現実」のあいだで気持ちが引き裂かれるような日がありませんか。私もよくあります。自分の判断は本当にこれでいいのか、誰かを傷つけていないか、それでも前に進まないといけないのか……そんなモヤモヤを抱えたまま仕事をしていると、ふと心がすり減る瞬間があります。 『不毛地帯 第五巻』を読んでいて、保存された抜粋の多くが「人間としての感情」と「職務としての判断」がぶつかる場面に集中しているのが印象的でした。壹岐の迷いや後味の悪さ、老いた上司への複雑な感情、国益と企業利益のはざまで割り切れない気持ち。どれも綺麗ごとでは済まない現場の空気で、読んでいるとこちらまで胸がざらつきます。ただ、そのざらつきが、不思議と自分の迷いと重なってくるんですよね。 この巻が効いてくるのは、まず「長期で物事を見るとはどういうことか」を、生々しい事例で体感できるところです。十年単位で布石を打つ企業の姿勢や、政治と資源開発の絡み合いが描かれる中で、短期の感情だけでは仕事は進まない現実が見えてくる。もう一つは、壹岐が何度も「人としての痛み」を抱えたまま判断を下す姿から、自分の弱さも抱えたままでいいのだと思わせてくれるところです。誰しも割り切れないまま仕事をしている、という視点が少しだけ心を軽くします。 こんな人に刺さる本です。組織に揉まれながらも、自分の感情を捨てずに働きたいと思っている人。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの24%が集中しています。
読書の順序
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