
パレード (幻冬舎文庫)
吉田 修一
ポプラ社 / 2025-01-27
この本について
人と一緒に暮らしたり、同じ空間で長く過ごしていると、「本音ってどこまで出していいんだろう」と迷うことがけっこうあります。むしろ、わからなくなる瞬間のほうが多い気がします。距離を縮めたいと思うほど、踏み込みすぎるのが怖くなるというか。そのあたりのモヤモヤに、吉田修一の『パレード』は妙にリアルに触れてきます。 今回送っていただいた抜粋がまさにそうで、話したいことではなく、話してもいいことだけを話すことで、共同生活がかろうじて成り立っているという一文。この感覚が刺さる人は多いはずです。自分をさらけ出す勇気がないというより、出してしまえば何かが崩れるのがわかっているから慎重になる。その微妙な空気のバランスを、この小説は登場人物の立ち位置や沈黙の重さを通してじわじわ描いてきます。 そして、物語の中に散らばる科白や宵の口、バティック、ヘテロなどの細かな言葉の断片は、日常の中にある“説明されない気配”を拾い上げていて、読んでいる側まで登場人物の部屋に同居しているような気分になります。誰も決定的なことは言わないのに、その沈黙の奥にあるものだけが確実に積もっていく。その感覚が、この作品の怖さでもあり面白さでもあります。 人との距離感がうまくつかめないとき、あるいは、表面上は平和に回っているけれど、その裏にある空気から目をそらせなくなっているとき。この小説は、正解をくれるというより、「関係ってこういう揺れがあるよね」と静かに寄り添ってくれます。空気の変化に敏いタイプの人に、特に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
読書の順序
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