
この本について
最近、経済の話になると「数字ばかりで、人の暮らしがどこか置き去りになっていないか」と感じることが多いんですよね。効率や成長の話は分かりやすいけれど、自分の生活実感とどうつながるのかが見えなくて、モヤモヤだけが残るというか。そんなときに宇沢弘文さんの『経済学は人びとを幸福にできるか』を読むと、経済を“人間の営みの一部”として捉え直す視点が戻ってきます。 この本が効いてくるのは、まず「経済学は貧しい者のためにある」という姿勢が全編に通っているところです。市場原理やコスト・ベネフィット分析のような合理性を頭から否定するわけではなく、それが社会的共通資本や教育、医療といった領域とどう折り合うべきかを、具体的な制度史のなかで語ってくれます。また、金融を“儲けるための仕組み”ではなく“社会が回るための基盤”として見直す話や、大学を社会的共通資本として守る覚悟のエピソードも、今の働き方や学びの行き詰まりを考えると意外なほど身近に響きます。 さらに、ニューディール政策やイギリスの社会政策、植民地教育など、歴史の具体例が多いのも救いで、抽象論に迷わず「人間の幸福を守るために制度はどうあるべきか」を自分なりに考えやすくなります。経済の話題に関心はあるけれど、数字や専門用語だけではしっくりこない……そんな人に刺さる一冊だと思います。
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