
野火(新潮文庫)
大岡 昇平
新潮社 / 1954-04-30
累計読者数8
平均ハイライト数 6.3件/人
推定読了時間 約2時間41分
star総合評価 32/100
start序盤集中型
check_circle推定完走率 10%
この本について
仕事でも生活でも、どうにも行き先が見えない時ってありますよね。前に進みたい気持ちはあるのに、選べる道が細っていく感じというか。そんなときに、人はなにを拠りどころにして立っていられるのか……と考えさせられることがあります。 『野火』を読んでいて印象的なのは、極限状況の中で主人公がふと感じる“無意味な自由”や、“陰性の幸福感”といった、説明のつかない内側の揺れでした。希望があるわけでも救いがあるわけでもないのに、なぜか心の奥で小さく灯るものがある。その描写が、妙に現実的なんです。行く先がなくても人は選べるし、選ぶことでかろうじて自分を保てる。そこに気づかされました。 さらに、他者を思いやる余裕なんてないはずの状況で、自己保存の本能がどう働くのか、そのエゴの生々しさにも何度も立ち止まらされます。きれいごとではなく、追い詰められたときの自分の姿を鏡のように見せられる感覚があって、読後にじわじわ効いてきます。 自分の弱さや醜さまで含めて受け止めたい、そんな人には刺さる一冊だと思います。極端な状況の物語なのに、そこで揺れる心のかたちは驚くほど自分の日常に近い。そう感じられるからこそ、この本は長く読み継がれているのかもしれません。
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出版社による紹介
敗北が決定的となったフィリッピン戦線で結核に冒され、わずか数本の芋を渡されて本隊を追放された田村一等兵。野火の燃えひろがる原野を彷徨う田村は、極度の飢えに襲われ、自分の血を吸った蛭まで食べたあげく、友軍の屍体に目を向ける……。平凡な一人の中年男の異常な戦争体験をもとにして、彼がなぜ人肉嗜食に踏み切れなかったかをたどる戦争文学の代表的名作である。
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