
見てしまう人びと 幻覚の脳科学
オリヴァー サックス、大田 直子
早川書房 / 2014-10-25
この本について
人と話していても、ふと「自分が見ているものって、本当に“同じ”なんだろうか」と不安になることがあります。自分の感覚に自信が持てない瞬間って、案外だれにでもあると思うんですよね。そんなモヤモヤを抱えたまま日常をこなしていると、世界の“見え方”そのものがじわっと揺らいでくる感覚がある。 『見てしまう人びと』は、その揺らぎの正体を静かにほどいてくれる本でした。とくに印象的だったのは、幻覚が「何もないところから突然起きる現象」ではなく、脳の特定領域が状況によって過剰に働いた結果として生まれてくる、かなり具体的なプロセスだと示してくれる点です。視覚を失うと逆に視覚野が興奮しはじめるとか、音が遮断されると脳内の音楽ネットワークが勝手に動きだすとか、いままで “心の問題” として片づけていたものが、実はきわめて物理的な現象として説明されていく。自分の感覚がぶれる瞬間にも、小さな理由が積み重なっているだけかもしれない、と思えるようになります。 もう一つ救われたのは、幻覚そのものよりも、それをどう受け止めるかが人によって大きく違うという視点です。たとえばシャルル・ボネ症候群の人は、見えているものが現実ではないと冷静に把握している。夜になるとその判断が揺らぐ人もいる。感覚の揺れ方に“正しさ”はなくて、状況と脳の状態の組み合わせで変わるだけなんだと知ると、自分の不安にも少し距離が置けるようになります。 感覚のブレが気になる人や、他人の見ている世界をもう少し丁寧に理解したい人にとくに刺さる本だと思います。
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多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの36%が集中しています。
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