
女装と日本人 (講談社現代新書)
三橋順子
講談社 / 2008-09-20
この本について
性の話題について考えるとき、「どうして国や文化によってこんなにも捉え方が違うんだろう」とモヤモヤすることがあると思います。同じ行動なのに、ある場所では自然に受け止められ、別の場所ではやたら説明や正当化が求められる。その差の理由が分からないまま、どこか自分の感覚にも自信が持てないまま、薄い霧の中にいるような感じが続くことがあります。 この本が面白いのは、その霧を文化の側からゆっくり晴らしてくれるところです。たとえば読者の方が保存していた「タイでは前世が女だったから、という輪廻転生の考え方で説明される」という一節は、まさに文化ごとの“前提”が行動の意味づけを左右するという典型例です。日本でも、古くから僧侶が女の姿に変わる物語があったり、宗教的な世界観の中に女性の身体をとらえる枠組みが組み込まれていたりして、現代とは違う見え方があったことが丁寧に描かれています。ただ知識が増えるというより、「自分が当然だと思っていた基準は、たまたま今ここにいるからそう見えているだけかもしれない」という感覚が育つ本です。 文化や歴史に視点を移すことで、「自分の感じ方はおかしくない」と思える余白が生まれますし、誰かを理解しようとするときの距離感も少しやわらかくなります。自分の枠組みそのものを疑ってみたい人、あるいは性の問題を“今この瞬間”の価値観だけで語り切れないと感じている人には、かなり静かに効いてくる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
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