
クレオール主義 (ちくま学芸文庫)
今福龍太
この本について
最近、「自分はいったいどこに立っているんだろう」とふと迷うことが増えました。仕事で環境が変わったり、生き方の基準が揺れたりすると、足場がスッと消える感じがあるんですよね。そんなとき、記憶とか故郷とか「自分の原点」みたいなものを思い出そうとしても、そこにもどこか曖昧さがあって、逆に不安になることがあると思います。 『クレオール主義』は、その曖昧さを無理に埋めようとせず、むしろ「揺らぎそのものの意味」をじっと見に行くような本です。読者が保存していた抜粋を見ていると、忘却への恐れや、場所に刻まれた記憶、そして故郷の愛のなかに最初から喪失が埋め込まれているという視点に強く反応している気がしました。失われたものを取り戻す話ではなく、「なぜ失われたように感じるのか」を静かに照らすところに、この本の効き目があります。たとえば、思い出の場所が自分を形づくる一方で、自分の身体にも歴史が刻まれていくという逆方向の視点は、環境の変化に置いていかれたように感じるときに、少しだけ呼吸を整えてくれます。また、「ネイティヴ」という言葉や、伝統保存の背後にあるノスタルジーの構造をたどる章は、自分の価値観がどこから来ているのかを考え直すきっかけになります。 本来の居場所がよくわからなくなった人、環境が変わるたびに自分まで薄まる気がしてしまう人には、とくに静かに刺さると思います。無理に答えを出さずに、記憶と場所のあいだにある揺れをそのまま見つめる。そんな読み方ができる本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの86%が集中しています。
読書の順序
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