
虫めづる姫君~堤中納言物語~ (光文社古典新訳文庫)
作者未詳、蜂飼 耳
この本について
仕事でも人間関係でも、言いたいことがあるのに言葉が見つからず、ただ気持ちだけが先ににじんでいくような瞬間ってありますよね。説明や交渉がうまくいかないと、「ちゃんと伝えるってなんだろう」と妙に立ち止まってしまうことがあります。 『虫めづる姫君~堤中納言物語~』を読んでいて感じたのは、千年前の物語なのに、人の心の動きだけは驚くほど今と地続きだということでした。泣き叫ぶ代わりに、相手の胸にそっと届くような歌を置いていく登場人物たち。その距離の取り方が、感情を押し付けずに関係を動かすヒントとしてじわっと効いてきます。また、風習や制度は現代とはまったく違うのに、そこを“理解しきれなくても物語は響く”という感覚が、この本の大きな強みだと思いました。わからない部分を抱えたまま読み進めても、情景や心の揺れがまっすぐ届いてくるんです。 それに、はじまりそうで始まらない〈貝合わせ〉のように、余白を残しながら読者の想像をふくらませる場面が多くて、その“待っている時間の楽しさ”を思い出させてくれます。全部を説明しきらないからこそ感じられる豊かさって、忙しさに流されがちな日常では意外と忘れてしまいがちです。古歌や漢詩が季節を運んでくるように、読みながら自分の感受性が少しずつ呼び起こされる感覚がありました。 昔の物語に苦手意識がある人でも、人物の心の動きに寄り添って読みたいタイプにはとても向いています。特に「言葉で人との距離をどう取るか悩むことがある」という人には、静かに効く一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
読書の順序
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