
この本について
仕事でも人生でも、「自分はいまどこを走っているんだろう」とふと立ち止まる瞬間があります。昔抱いた憧れと、今の自分の間にあるズレに気づいてしまったときの、あの落差みたいなもの。前に進む理由も後ろを振り返る勇気も曖昧で、ただ気持ちだけが宙ぶらりんになるあの感じです。 『ユーミンの罪』を読んでいて思ったのは、その宙ぶらりんこそが私たちの世代の「標準装備」なのかもしれない、ということでした。ユーミンが提示した“瞬間のまばゆさ”を、私たちは若い頃に無邪気に受け取ってしまった。でも、その光に照らされたまま大人になっていくと、自分の足元の影に戸惑うことも増えるんですよね。この本はそこを丁寧にほどいてくれます。刹那のきらめきに酔わせてくれたユーミンが、なぜ同時に私たちを迷わせたのか。死をすら軽やかに描けた背景や、女性の生き方が大きく変わった時代との絡みを追っていくことで、あの違和感にちゃんと名前が付いていきます。 読んでいて特に効いたのは、「ユーミンはストーリーではなく“点”を切り取る人」という指摘でした。私たちが“わかった気”になってしまう理由も、その一瞬の輝きを自分の人生の曲線にそのまま当てはめてしまう勘違いも、妙に腑に落ちます。そして、ユーミンが開けてしまった「刹那を追う快楽」の箱と、それを受け取った世代がどんな葛藤を抱えたのか。これを知れるだけでも、自分のモヤモヤを少し外側から扱えるようになります。 こんな人に刺さると思います。あの頃の“憧れの温度”と、今の自分の現実との間で揺れる感覚に、未だにうまく名前をつけられていない人。
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