
未明の闘争(下) (講談社文庫)
保坂和志
講談社 / 2016-02-13
この本について
仕事の帰り道とか、ふとした隙間の時間に、自分の人生がどこから始まってどこへ向かっているのか、よくわからなくなる瞬間ってありませんか。最近の出来事だけじゃなく、昔の記憶や、説明できない予感みたいなものまでまとまらずに浮かんでくる感じ。そういうときに、答えらしい答えよりも「この揺らぎのままでもいいんだ」と思わせてくれる本に会いたくなります。 『未明の闘争(下)』は、まさにその“揺らぎ”をそのまま生きているような一冊でした。死の気配が日常に溶け出してくる感じや、会ったこともない昔の人たちと心が触れたような一瞬、何気ない仕事帰りの温泉やマクドナルドの待ち合わせが妙に長く刻まれる時間感覚。読んでいると、自分の中にも覚えがある細かな感情が立ち上がってきて、「こういう感じ、説明しづらいけど確かにあるよな」と静かにうなずいてしまいます。世界の見え方が一瞬変わって、またすぐ戻る、その短いひらめきを何度でも拾い上げていいのだと教えてくれるところが、この本の効き目です。 特に、何十年も前の出来事さえ“今”のように立ち上がる感覚や、偶然すれ違っただけの人との微かな交差にまで意味を見ようとする視線は、自分が普段流してしまっている時間の厚みを思い出させてくれます。理屈じゃなくて、ただ「そういうふうに世界を感じてもいい」と許してくれる本です。 こんな人に刺さります。自分の生活は普通に回っているのに、心だけがどこか別の場所にいるような感覚を抱えたままの人。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの36%が集中しています。
読書の順序
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