
合本 11/22/63【文春e-Books】
スティーヴン・キング and 白石朗
文藝春秋
この本について
最近、過去のことを必要以上にきれいに思い出してしまう瞬間ってありませんか。あの頃はもっとシンプルだった気がするとか、もし時間を巻き戻せたらやり直せる気がするとか。でも、実際に戻ったところで、本当に求めていたものが手に入るのかはだいぶ怪しい…そんなモヤモヤを、この『11/22/63』は容赦なく揺らしてきます。 読者が保存していた場面の多くは、音楽や匂い、街のざわめきみたいな“生活の手触り”が濃いところなんですよね。キングは過去を理想化しません。むしろ、ロックンロールが鳴り響く眩しい時間の隙間に、忘れたいはずの不快さや暴力性も平然と置いていく。だからこそ、ただのタイムトラベルではなく、「戻れるとして、あなたは本当に戻りたい?」と静かに問いを投げてきます。 読んでいると、過去に惹かれる理由が変わっていきます。逃げ場としてのノスタルジーではなく、その時代に生きていた普通の人の息づかいに触れることで、今の自分の選択にも責任を持たざるを得なくなる。気づくと、未来に起こる変化の大きさと、そこに含まれる“取り返しのつかなさ”を体で理解しはじめる感覚があります。 昔を美化しがちな人、いまの生活に違和感を抱えてつい「もしも」に逃げてしまう人には、とくに刺さると思います。ここに描かれる膨大な音楽や風景のディテールは、懐かしさに浸らせるためではなく、過去も現在と同じくらい複雑で、簡単には扱えない場所だと教えてくれるためにあります。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの21%が集中しています。
読書の順序
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