
この本について
仕事でも日常でも、自分の判断や思考が「本当に自分のものなのか」わからなくなることがあります。たとえば、情報に振り回されている気がしたり、誰の目線で動いているのか曖昧になったり。そんなモヤモヤを抱えたまま走り続けると、だんだん自分の感覚が鈍くなっていくような不安が出てきます。 円城塔『世界でもっとも深い迷宮』は、その感覚を物語の側から裏返してくれる一冊です。ページをめくる速さを「読者からの感想」とみなし、物語がこちらに合わせて姿を変えていくという発想は、読む側と読まれる側の境界をあいまいにします。読み手の選択を手放したとき、かえって自分の反応のクセが浮かびあがる感覚があって、これはちょっとした鏡のようです。また、物語そのものが生き物のように進化し続ける描写を追っていると、「自分も何かの感覚器の一部なのかもしれない」という視点がじわりと出てきて、いつもの思考の枠が一段ずれる感じがあります。 ゲームでも小説でもない、どちらのルールにも収まりきらない形をあえて生き延びさせようとする試みを読むことで、「自分のやり方が少し変でも、それはそれで存在理由になるのかもしれない」と素直に思えるのが、この本の効き方だと思います。 世界の見え方が少しでもずれてほしいときに読んでみてほしいです。こんな人に刺さるのは「自分の思考の癖と向き合ってみたい人」。
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