
86―エイティシックス― (電撃文庫)
安里 アサト, しらび, and I-IV
KADOKAWA / 2025-09-10
この本について
仕事でも日常でも、知らないうちに「自分は正しい側にいる」と思い込んでしまう瞬間ってありますよね。悪意があるわけじゃないのに、気づけば誰かを分類して、距離を置いてしまっている。その状態にうっすらモヤモヤしている人には、『86―エイティシックス―』の描く世界が妙に刺さるんじゃないかと思います。 この物語の中で強烈なのは、罪を自覚しない社会の“平穏さ”です。首都のメインストリートは戦時下とは思えないほど美しいし、無人機だと思い込んでいる兵器の中には、生身の“誰か”がいる。それに気づかない、というより「気づこうとしない」空気があまりにも自分の日常と地続きに感じて、読んでいて胸がざわつきました。差別や分断というと遠い話に見えるけれど、そこで起きているのは、見たいものだけを見る態度が極端に進んだ姿なんですよね。 そしてもう一つ、印象的なのはレーナの存在です。特権の中で育った彼女が、制度の“正しさ”と自分の感覚のズレに徐々に向き合っていく過程が、こちらの思考を勝手に引きずり出してくる。何かを変えようとするって、勇ましい行為というより、まず自分の足元の違和感をちゃんと見ることなんだな、としみじみ感じました。 綺麗ごとではなく、現実的な温度で「社会の構造の中で自分はどう振る舞いたいか」を考えたい人に刺さる一冊だと思います。読後に何かが劇的に変わるわけじゃないけれど、自分の見ている世界を少しだけ別角度から照らしてくれる、そんな読み味でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの93%が集中しています。
読書の順序
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