
【合本版】世界99 (集英社文芸単行本)
村田沙耶香
集英社
この本について
最近、自分の中に複数の「正しさ」が同居している感じがあって、どれが本心なのかよくわからなくなることがあります。周りに合わせているつもりはないのに、気がつくと世界が何層にも分かれて見えるというか。差別や感動の話題になると特にそうで、どこか他人ごとのような、でも確かに自分の中にもある感覚がじわっと重たく残る。たぶん、あの薄い違和感を言葉にできずに抱えている人は多いんじゃないでしょうか。 村田沙耶香『世界99』は、その“説明しづらい違和感”を、少しだけ輪郭のあるものとして見せてくれる小説でした。例えば、感動を「安全な場所にいる人間の娯楽」と切って捨てる感覚。差別心が自分の中にダウンロードされていく感触に気づく瞬間。気づけば無意識のうちにペルソナを切り替えている自分への居心地の悪さ。こういう、日常だと喉の奥で引っかかったままになりがちなテーマを、極端な世界設定に落とし込むことで、逆に自分の足元を見つめ直させられます。 読んでいて一番刺さったのは、「世界①と②と③と④の自分が同時に存在している感覚」が語られる場面で、これって大げさな比喩じゃなく、SNSや職場や家族の前で別々の自分を動かしている今の生活そのままだなと感じました。振り返ると、自分の“本物”を探すより、環境ごとの“使いやすい自分”を選んでいる時間のほうが長いんですよね。 現実を変える本ではないけれど、今の世界のどこに自分の違和感が引っかかっているのかをそっと照らしてくれる作品でした。自分の中にあるグロテスクさや曖昧さを無視せずにいたい人に、とても静かに刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの15%が集中しています。
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