
殺人出産 (講談社文庫)
村田沙耶香
河出書房新社 / 2014-07-15
この本について
日常を過ごしているだけなのに、「自分の感じ方は少数派なのかも」とか「私のほうが間違ってるのかな」と不安になることってありませんか。周りの“正しさ”が大きすぎて、自分の感覚がじわじわ押し潰されていくような、あの居心地の悪さです。僕もよくあって、正しさの基準を外側に置きすぎて疲れてしまうことがあります。 『殺人出産』は、そんなモヤモヤを極端な設定にまで突き詰めることで、「正しさって本当に一つなの?」という視点を強烈に揺さぶってきます。作中の人物が、殺意を清らかさと同列に語ったり、他人を“生活の邪魔にならない動物”として扱ったり、正義の形が人によって根本から違うことを平然と受け入れている世界。そのズレに触れていると、こちらの中にもある小さな違和感が、逆に少しだけ息をしやすくなるんです。自分が感じている「気持ち悪さ」や「これは受け入れられない」という感覚も、誰かの正しさに負けていいものじゃないんだと確認させられます。 さらに、本作には「被害者と加害者が一瞬で入れ替わる」という怖さと解放感が同時に描かれています。あの転換に救われる読者が多いのもわかります。ずっと耐えていた人が、世界の構造そのものを問い直した瞬間、はじめて呼吸できるようになる感じ。自分の世界がひっくり返る怖さよりも、「あ、選び直していいんだ」と思える軽さが残ります。 自分の感覚を押し殺しがちな人、周囲の“普通”にいつも置いていかれる感覚がある人には、とくに刺さると思います。極端な物語なのに、読むと自分の輪郭が少し戻ってくるような、不思議な一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの44%が集中しています。
読書の順序
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