
Red (中公文庫)
島本理生
Createspace Independent Publishing Platform / 2018-09-22
この本について
仕事も家庭も、それなりにやれているつもりなのに、どこかでずっと「自分だけ取り残されている気がする」。誰かに遠慮して、本音を飲み込んで、気付けば低くかまえる癖だけ増えていく。そんなふうに自分の輪郭がぼやけていく感覚、心当たりがある人は多いと思います。僕もそうで、忙しさに紛れて「まあこんなものか」と自分を説得してしまうことがよくあります。 島本理生『Red』は、そういう曖昧な不安を一気に説明してくれるような派手さはありません。でも、登場人物の感情の揺れを追っていくうちに、「ああ、自分も似たところでつまずいていたんだ」と少しずつ輪郭がはっきりしてくる瞬間があるんです。例えば、低く構えれば低く扱われるという気付きや、母親・妻・働く人としての役割が重なりきらずはみ出してしまう感覚。あるいは、女性扱いをめぐる揺れや、自立と孤独の間で揺れる気持ち。それらが具体的なシーンとして描かれていて、言葉にできなかった思いに手が届く感じがあります。 読んでいると、誰かに理解されないことで傷つくのではなく、自分でも自分を理解しきれていないところが苦しかったのかもしれない、と少し視点が変わります。働くことが自分にとってどんな意味を持つのか、パートナーとの距離感をどう保ってきたのか、遠慮と誠実さの境目をどこに置くのか。物語を通して、そんな問いが静かに浮かび上がってきます。 「自分の気持ちにうまく名前がつけられないまま日々をやり過ごしている人」に、じわっと届く一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
読書の順序
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