
持ってこなかった男
吉田靖直
この本について
人間関係で「自分だけちょっと温度が違う気がする」とか、「場の空気には合わせられるけど、本音は全然別のところにある」といったモヤモヤ、けっこうありますよね。うまく振る舞えているはずなのに、心の中では悔しさや違和感がぐつぐつしていて、誰にも言えないまま詰まっていく感じ。僕もよくあります。 吉田靖直さんの『持ってこなかった男』は、その“内側のざらつき”がやけにリアルに描かれています。黒目を動かさずに視界の端で相手を確認するような、ちょっとした処世の工夫が出てくるのも、外向きと内向きのギャップを抱えている人には妙に刺さると思います。そして、悔しさで涙が出そうになりながらも、周りの雑さに静かに反論している心の声。ここが読者に強く保存されているのは、「言い返せないけど、納得もしていない自分」の気持ちを代わりに言語化してくれているからだと感じました。 この本が効くのは、無理にポジティブになろうとか、器の大きい人間になろうとする方向ではありません。むしろ、こういう感情を抱えてしまう自分を、そのまま観察してみる余裕をくれるところです。誰かを嫌いになってしまう瞬間の自分も、処世術に逃げ込む自分も、いったん作品の中に預けて眺めてみると、少しだけ肩の力が抜けるはずです。 こんな人に刺さると思います。外ではちゃんとして見えるけれど、内心ではいつも小さく葛藤している人。日々の疲れを笑いと痛みの間で受け止めたい人にとって、ちょうどいい温度の一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
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