
いろごと辞典 (角川ソフィア文庫)
小松 奎文
KADOKAWA / 2018-03-24
この本について
日々仕事をしていると、言葉にしづらいモヤモヤってありますよね。特に、人の欲や感情が絡む話になると、うまく捉えられないまま「なんとなく距離を置く」みたいなことをしがちです。とはいえ、避けているだけだと、自分の感覚の輪郭がぼやけたまま残り続ける。僕もずっとそのあたりが苦手でした。 そんな時に読んでみて、ちょっと視界が変わったのが『いろごと辞典』でした。エロというより、“かつての人が欲望をどう扱ってきたか”が淡々と並んでいる一冊で、読んでいてまず驚くのが語彙の細かさです。陰唇を「花弁」と言ったり、会陰を「蟻の戸渡り」と呼んだり、昔の人はここまで身体や営みを観察し、名前をつけてきたのかと感心します。単なる知識ではなく、言葉というフィルター越しに「当時の価値観」や「性に対する距離感」が見えてくるのが面白いところです。 また、この本には、遊女の養生や技法を記した文書が出てきたり、祭りや信仰の中で性がどう扱われたかが載っていたりします。性愛を隠すのではなく、生活や祈りの延長として受け止めていた時代があったと知ると、現代の「なんとなく恥ずかしい」という感覚のほうが実は特殊なのかもしれないと思えてきます。自分の感情や欲が“変”なんじゃなくて、歴史的にはもっと幅があったのだと感じられるだけで、少し肩の力が抜けました。 特に「自分の性に対する距離感がよくわからないまま大人になった気がする人」に刺さると思います。何かを変えるための本というより、曖昧に抱えていた領域に光を当ててくれる辞典。読んで終わりではなく、時々ページをめくって、自分の感覚の位置を確かめるように使える本でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
読書の順序
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