
パテカトルの万脳薬 脳はなにげに不公平 (朝日文庫)
池谷 裕二
株式会社朝日新聞出版 / 2019-05-13
この本について
思い通りに動けない日ってありますよね。やる気が出ないとか、判断が遅れるとか、気づけば反射で選んでいたとか。「自分の意思ってどこまで本物なんだろう」と考え始めると、ちょっとした不安がじわっと広がることもあります。僕も仕事の選択や人との距離感でつまずくたびに、その感覚を思い出します。 この本の面白いところは、「意思決定は脳のゆらぎの追認にすぎない」という、一見すると身も蓄もない話を突きつけながら、その視点がむしろ気持ちを軽くしてくれる点なんです。行動してからでないと自由かどうかは確認できないという話も、未来に完璧な選択肢を準備しなくていいんだと考えるきっかけになります。また、他者の心を読む力が先にあって、そこから自分の心が生まれたという流れは、人間関係で悩むときの見方を静かに更新してくれます。 個人的には、「脳はまだ余裕を残している」という記述がいちばん救いになりました。今の状態がすべてじゃなくて、脳にはもともと余白がある。無理に能力を盛ろうとするより、バランスを壊さずに扱うほうが長い目で効いてくる。そんな感覚がじんわり残ります。 自分の選択に少しでも不安を抱きやすい人、あるいは「意思」や「心」という言葉に振り回されがちな人には、とても静かに効いてくる本だと思います。
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