
川上弘美書評集 大好きな本 (文春文庫)
川上 弘美
文藝春秋 / 2010-09-03
累計読者数3
平均ハイライト数 17.3件/人
推定読了時間 約5時間59分
star総合評価 58/100
menu_book精読型
check_circle推定完走率 44%
この本について
ときどき、自分が読んでいる本が「現実から逃げたいだけなんじゃないか」と不安になることがあります。読むほどに世界が濁って見える瞬間があったり、逆に日常の細部が急に気になり始めたりして、読書そのものに揺さぶられる感じ。そんなときに、この書評集を読むと、少し呼吸が整うんです。読書って、現実から離れることじゃなくて、むしろ現実の奥行きを見つけることなんだと、淡々と教えてくれるからです。 川上弘美さんの文章は、どこか「ずれ」をそのまま受け入れていて、理解できないものを無理に説明しようとしません。人の生死や、作品の中にひそむ違和や猥雑さを、そのまま見つめる視線がある。だからこちらも、読みながら自分の中の「言語化できない感覚」を無理に片づけなくていいんだと思えてくる。読後にぽつぽつと言葉の断片が浮かんでくるような、あの不思議な余白に救われます。 そして何より、著者の「思いこみのなさ」が心地いいです。美化も卑下もせず、技はあるのにそれを誇らない。読者を置いていかず、かといって迎合もしない。その距離感が、日常に溜まっていたこわばりをゆるめてくれます。「自分だけじゃない」と思えるけれど、「自分の感覚で読んでいい」とも言われているようで、そこがありがたい。 日常の中でふと立ち止まってしまう人、自分の感覚の揺れを少しだけ大切にしたい人に、そっと効いてくる一冊だと思います。
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