
たゆたう (角川文庫)
長濱 ねる
KADOKAWA / 2023-09-01
この本について
ときどき、自分の肩書きも立ち位置もよくわからなくなる時があります。何かを頑張っているはずなのに実体が伴わない感じがしたり、誰かの圧倒的な才能に出会ったあと、理由のない落ち込みに沈んだり。うまく説明できないまま、ただモヤモヤだけが残る日ってありますよね。 『たゆたう』は、そのモヤモヤに直接答えをくれる本ではありません。むしろ、著者自身も同じように迷いながら、その揺れたままの気持ちを丁寧に拾っていくような文章が続きます。だからこそ、読んだ人の「いま」によって受け取るものが変わるし、こちらが勝手に安心したり、少しだけ気が楽になったりします。過不足なく意味を届けようとしないから、読みながらこっちもかまえなくていいんですよね。 個人的に効いたのは、まず「素晴らしいものに触れたあとの沈み方を、そのまま言葉にしてくれているところ」。あのどうしようもない感覚を、無理に前向きに変換しなくていいと思わせてくれました。それから「世の中とわざと足並みをずらしたくなる気持ち」との付き合い方。変に断言しない語り口が、悩みの温度にちょうどいいんです。そしてもうひとつ、「誤解されたくなくて説明しすぎてしまう癖」にそっと寄り添ってくれるところ。正しさより、自分の輪郭をそのまま見つめればいいのかもしれないと思えました。 刺さる人は、きっと「うまく言語化できない揺れ」を抱えたまま生きている人です。読後に劇的な変化があるわけではないけれど、静かに呼吸が戻ってくるような一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの38%が集中しています。
読書の順序
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