
この本について
仕事でも日常でも、「自分の判断はこれでいいのか」「もっと別の見方があるんじゃないか」と立ち止まることが増えた気がします。正しさを求めているはずなのに、どこか視界が狭くなっていく感じがするというか。そんなときに『棲月―隠蔽捜査7―』を読むと、物語として楽しみながらも、思い込みで固まった視点がゆるむ瞬間がありました。 たとえば、登場人物を光らせるのはその人物自身ではなく、真逆の存在がそばにいることだという話。これって人間関係にも仕事にもそのまま重なるんですよね。合わない相手にイラつくことはあっても、その人がいるから気づける自分もちゃんといる。戸高刑事が“右のおっつけ”として描かれるくだりは、まさにその感覚を地に足のついた形で見せてくれます。 さらに、「小説とはもうひとりの自分に出会う旅」という作者の言葉が、読みながらずっと響いていました。未来に迷う若者にも、過去と折り合いをつけたい大人にも、物語はひとつの逃げ場ではなく“生き直すための場”になりうる。シリーズの緊張感あるストーリーの中に、こうした静かな視点の転換が混ざっているのが、この巻の魅力だと思います。 自分の考え方が固まりすぎているかも、と感じている人に刺さる一冊です。
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