
殺人依存症 (幻冬舎文庫)
櫛木理宇
この本について
日々やるべきことは進んでいるはずなのに、どこか胸の奥に重いものが居座ったまま。自分でも理由がよく分からないまま、気づくと「なんでこんなに疲れているんだろう」と立ち止まってしまうことがあると思います。表向きは普通に暮らしていても、心の中には整理できない痛みや、言葉にできない揺らぎがずっと残っているような感覚です。 『殺人依存症』を読んでいて印象的だったのは、「疼痛」や「啼泣」といった、体の奥からにじむような痛みの言葉が静かに並んでいくところでした。そこに引かれている人は、きっと自分でも説明しきれない苦しさに名前を与えてほしかったのかもしれません。また、「三年以上生死不明な配偶者」や「不幸な」という表現が刺さったのは、曖昧なまま時間だけが積み重なってしまう状況の、どうしようもなさに心が反応したからだと思います。答えの出ない関係性を抱えたまま生きている人には、この停滞の描き方が妙にリアルに感じられるはずです。 さらに、「ライナスの毛布」という言葉に足を止めた人は、たぶん分かりやすい幸福や前向きなメッセージより、自分がしがみついてしまう弱さや依存の方に覚えがあるタイプだと思います。作中の人物たちが陥穽のような場所でもがきながら、それでもどこか人間らしさを失わない姿は、こちら側の感情を静かに刺激してきます。救いが派手に提示される物語ではないけれど、痛みの形を映し返してくれることで、自分の内側の輪郭が少しだけ整うような読後感があります。 感情の整理がうまくできず、心のどこかがずっとざわついたままの人に刺さる物語です。そんな時期を経験しているなら、この本の暗い光が案外ちょうどよく寄り添ってくれるかもしれません。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの40%が集中しています。
読書の順序
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