
叫ぶ臓器 (文芸社文庫)
麻野 涼
文芸社 / 2021-01-28
この本について
仕事の現場で、人の噂や組織の事情に振り回されて、何が正しくて何が自分の思い込みなのか分からなくなること、けっこうありませんか。人の足跡を追いかけているつもりが、気づけば自分の立ち位置まで揺れてくるようなあの感じです。今回の『叫ぶ臓器』の抜粋を見ていると、まさにその「揺らぎ」に反応して保存したんじゃないかと思いました。 たとえば、記者組合の結成手順を知人づてに探る場面。表向きの制度やルールよりも、人を伝ってしか分からない“現場の温度”に触れざるを得ない状況が描かれていて、ここに共感した人は多いはずです。私も仕事で同じように、水面下の交渉や、表には出てこない力関係を実感するたび、正解のない道を探っているような気分になります。また、兄の足取りを追って警察に出向くくだりには、手続きとしては淡々としていても、当事者の焦りや孤独が染み出すようなリアルさがあります。事実を一つひとつ拾っていくしかない状況の苦さが、静かに胸に残ります。 この本は派手な事件ものというより、登場人物たちの「どうにも片付かない不安」を一緒に歩く物語です。筋書きを追うというより、社会の仕組みと個人の感情がどう交差するのかを、自分の生活に置き換えながら読むタイプの作品だと思います。表に出ない圧力の中で踏ん張っている人や、人間関係の“見えない線”に敏感な人には特に刺さるはずです。 はっきりした答えがほしい時期より、むしろ迷いの中で何かの手触りをつかみたい時にそっと効いてくる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの67%が集中しています。
読書の順序
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