
小説 ここは今から倫理です。 (集英社文庫)
ひずき優、雨瀬シオリ
集英社 / 2020-12-23
この本について
人と話していて、なぜか急に胸の奥がざわつく瞬間ってありますよね。相手の何気ない一言で、自分の教養や経験の浅さを突きつけられたような気がして、うまく言葉が返せなくなるとき。あとから「見返してやりたい」と思うのに、その場では固まってしまう。あの情けなさ、僕も何度も味わってきました。 『ここは今から倫理です。』を読んでいて、保存されていた抜粋の感じからも、似たようなところに引っかかった人が多いんだろうなと感じました。教養がないとバカにされる側の視点や、薄笑いを向けられるときの居心地の悪さ、それでもどうにか立て直そうとする気持ち。作品の中ではそのモヤモヤが、倫理という“正しさの議論”ではなく、もっと人間らしい反応として描かれています。シェーラーの「愛こそ、貧しい知識から豊かな知識への架け橋」という言葉も、知識の量より、相手を理解しようとする態度のほうが関係を動かすんだと静かに気づかせてくれます。 読んでいて思ったのは、知識があるかないかで人間関係が決まるわけじゃないという当たり前のことを、登場人物たちの不器用さを通して実感させてくれる点でした。強がりたいのに強がれないとき、うろたえた自分をごまかす余裕がないとき、この本の空気は妙に心にちょうどいい。きれいな答えではなく、揺れながら考えるプロセスをそのまま見せてくれるからだと思います。 刺さるのは、多分「人とうまく距離を取るのが苦手で、つい自分を低く見積もってしまう人」。ドラマチックな成長より、明日少しだけ呼吸しやすくなるような視点が欲しいときに、そっと横に置いておける一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの40%が集中しています。
読書の順序
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