
予測する心
ヤコブ・ホーヴィ、佐藤亮司
勁草書房 / 2021-02
この本について
仕事でも日常でも、同じ状況を見ているはずなのに、人によって受け取り方が違ったり、自分の判断がぶれるときがあります。あとから振り返って「なんであのとき、あんなふうに思い込んでたんだろう」と不思議になることもあると思います。感覚は確かだと思っているのに、実際はけっこう曖昧で、そこに自分の“クセ”が入り込んでいる気がする。そんなモヤモヤに心当たりがある人には、この本がかなり落ち着きどころをくれるはずです。 『予測する心』が面白いのは、脳がただ外界を受け取っているのではなく、「仮説を立てて、外界からの刺激と照らし合わせて更新している」という視点に立つところです。読者が保存していた抜粋にもあるように、感覚入力だけでは原因を一つに決められない。だから脳は、学習してきたモデルやバイアスを使って推論している。自転車を“見る”ときと“触る”ときの感覚が違っても、同じものだと判断できるのはこの仕組みのおかげで、逆にこの最適化が外れすぎると混乱が起きる、という説明がとても腑に落ちます。 この本が効くのは、日々の判断に「自分が何を前提にしているのか」を見直す材料になるところです。外界をそのまま受け取っているつもりでも、実は事前のモデルが先に働いている。そう理解すると、自分の反応のズレにも他人の誤解にも、少しだけ距離を置けるようになります。感覚と思考が統合されてはじめて知識になる、というカントの引用も、単なる哲学ではなく“実感としてわかる”形で扱われているのが嬉しいところです。 自分の認知のクセや思い込みを、もう少し丁寧に扱いたい人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの23%が集中しています。
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