
Genesis 時間飼ってみた 創元日本SFアンソロジー
小川 一水、川野 芽生、宮内 悠介、宮澤 伊織、小田 雅久仁、高山 羽根子、鈴木 力、溝渕 久美子、松樹 凛
東京創元社 / 201812
この本について
最近、頭の中がずっとざわついているというか、現実にいるはずなのに景色がどこか平板に感じることってありませんか。仕事にも日常にもちゃんと向き合っているつもりなのに、内側だけ闇が濃くなったような感覚になるとき、言葉にはしづらいまま溜まっていくものがあります。僕もそんなときは「世界の輪郭を少し違う角度から見たい」という気持ちだけが頼りになります。 『Genesis 時間飼ってみた』は、まさにその「輪郭をずらす」体験を、無理に説明せずに差し出してくる一冊でした。保存されている抜粋の多くが、光と闇、気配、匂い、質感の描写ばかりなのが象徴的で、読みながら自分の内側に沈殿していたものが少しずつ浮かんでは形を変えていく感じがあります。闇が均質であるとか、月に打たれ続けているとか、そういう比喩に反応した方は、きっと世界の捉え方を変えたくて手を伸ばしたのだと思います。 この本が効くのは、まず「気持ちの言語化では届かない部分」を動かしてくれるところです。滅亡の蔦に絡まれるような感覚や、少女の背が闇にひらかれていく情景を通して、自分の不安や停滞の輪郭がなぜか少しだけ見えるようになる。さらに、どの短編にも“救いすぎない救い”があって、怖さや寂しさを消さずに抱えたまま、次の一歩が見えるところが心地よいです。現実逃避ではなく、現実の見え方を調整する感じに近いと思います。 こんな人に刺さるのは、はっきりした答えよりも「まだ名前のついていない感情の居場所」を探しているとき。もし日々の風景にノイズが混じって見えるような時期なら、このアンソロジーがそのノイズに少しだけ意味を与えてくれるかもしれません。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの32%が集中しています。
読書の順序
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