
鈍色幻視行 (集英社文芸単行本)
恩田陸
集英社 / 2023-05-26
累計読者数4
平均ハイライト数 1件/人
推定読了時間 約9時間54分
star総合評価 34/100
boltライト読書型
check_circle推定完走率 42%
この本について
日々の生活がきちんと回っているはずなのに、どこか色味が抜けていくような感覚に襲われることがあります。大きな悩みがあるわけでもなく、ただ「自分の輪郭がぼやけている気がする」。そんなときに無理に気合いを入れても戻らなくて、むしろ静かな場所に身を置きたくなる、あの感じです。 『鈍色幻視行』を読んでいて惹かれるのは、まさにその「ぼやけ」の扱い方でした。旅は少しだけ死ぬことに似ている、とさらっと語られる場面がありますが、これが妙に現実に響きます。いつもの自分からほんの数ミリずれるだけで、世界が別の階層の光を帯びることがある。日常を捨てるでも逃げるでもなく、ただ別の時間に触れてみると、再び自分の輪郭が戻ってくることがある。その感覚をこの小説は静かに拾い上げてくれます。 記憶の中で紗がかかったように顔が思い出せない俳優の描写も、個人的には強く刺さりました。はっきりしないまま残っているものこそ、自分の奥にずっと滞在している気配。その曖昧さごと抱えていいんだと、背中を押してもらえるようでした。海や映画の記憶がふっと立ち上がる場面も多く、読んでいると自分のなかの埋もれた景色がゆっくり浮かび上がってきます。 曖昧なままの気持ちを無理に言語化したくない人、あるいは「変わりたいわけじゃないけれど、どこか風通しを良くしたい」と感じている人には、特に静かに効く一冊だと思います。
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出版社による紹介
謎と秘密を乗せて、今、長い航海が始まる。 撮影中の事故により三たび映像化が頓挫した“呪われた”小説『夜果つるところ』と、その著者・飯合梓の謎を追う小説家の蕗谷梢は、関係者が一堂に会するクルーズ旅行に夫・雅春とともに参加した。船上では、映画監督の角替、映画プロデューサーの進藤、編集者の島崎、漫画家ユニット・真鍋姉妹など、『夜~』にひとかたならぬ思いを持つ面々が、梢の取材に応えて語り出す。次々と現れる新事実と新解釈。旅の半ば、『夜~』を読み返した梢は、ある違和感を覚えて――
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