
蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)
恩田陸
幻冬舎コミックス / 2023-06-29
この本について
仕事でも趣味でも、続けているうちに「これってただの作業になってないか…」と不安になることがあります。積み重ねてきたことを信じたいのに、どこか惰性っぽく感じてしまう。あるいは、本気を出すべき場面で尻込みしてしまい、「全部をかけるって、そんなに簡単じゃないよ」と思ってしまう。僕も同じように揺れながら読んだのが『蜜蜂と遠雷(上)』でした。 この本の登場人物たちが口にする言葉には、読者が保存していた抜粋に表れているように、今の自分に引き寄せられる視点がいくつもあります。たとえば「再現芸術だからこそ、いつも新しくなければならない」という一文。努力してきたことを守りたい気持ちと、でも“今日の自分”で立ち向かわなければ音が死んでしまうという感覚。そのバランスに悩む人には、そのまま胸に落ちると思います。また「神様と遊ぶには、すべてを捧げなければならない」と語られる、全身全霊を差し出すことへの怖さ。やらない理由はいくらでも作れるけれど、それでも舞台の上では逃げられない、というあの瞬間。ここに共感した人は多いはずです。 そしてもうひとつ大きかったのは、「音楽は現在でなければならない」という視点でした。過去の型どおりにやれば安全だけれど、そこで止まってしまうと自分のやっていることがただの標本になる。これは音楽だけじゃなく、日々の仕事や創作にもそのまま当てはまります。自分が今ここで生きている証みたいなものを、どこに置くのかを問われている感じがしました。 「積み上げてきたものを守りたいけど、惰性にはしたくない」という人にとても静かに効く本です。音楽の話なのに、不思議と自分の生活の話として読める一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの19%が集中しています。
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