
掌の小説(新潮文庫)
川端康成
新潮社 / 1971-03-15
累計読者数5
平均ハイライト数 3.2件/人
推定読了時間 約7時間5分
star総合評価 29/100
start序盤集中型
check_circle推定完走率 16%
この本について
仕事でも日常でも、気づけば「景色が目に入らないまま一日が終わる」ときがあります。頭の中がつねに予定や人間関係で埋まっていて、自分の感覚がどれだけ鈍っていたのか、ふとした瞬間に気づくあの感じです。心に余白がないというより、余白のありかそのものを忘れてしまうというか。 『掌の小説』を読んでいると、その抜け落ちた感覚が少しずつ戻ってきます。谷の池の光と影の描写や、写真を撮るために風景を探し歩く場面に触れると、「見えなかったものが急に輪郭を持つ」ような感覚が生まれます。きれい事ではなく、ただ目の前の世界がほんの少し違って見えるだけ。その小さな変化が意外と効いてくるんですよね。また、「別れる男に花の名を教えておきなさい」のような一文に出会うと、人との関係に対しても少し距離を置いて見られるようになる。忘れたころに咲く花みたいに、時間がじわっと効いてくる視点です。 さらに、悲しみと喜びを足の重さで語るような、説明しきれない気持ちをすくい上げる表現もあって、自分でも処理しきれない感情をそっと言語化してくれる瞬間があります。大きな答えをくれる本ではないけれど、散らばった感覚を少しずつ取り戻す手がかりになる一冊です。 最近、自分の感情や景色にピントが合わないなと思っている人に刺さると思います。
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出版社による紹介
唯一の肉親である祖父の火葬を扱った自伝的な「骨拾い」、町へ売られていく娘が母親の情けで恋人のバス運転手と一夜を過す「有難う」など、豊富な詩情と清新でデリケートな感覚、そしてあくまで非情な人生観によって独自な作風を打ち立てた著者の、その詩情のしたたりとも言うべき“掌編小説”122編を収録した。若い日から四十余年にわたって書き続けられた、川端文学の精華である。
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