
アポロ18号の殺人 上 (ハヤカワ文庫SF)
クリス ハドフィールド、中原 尚哉
早川書房 / 2022-08-03
この本について
仕事で自分の意見が軽く扱われる時ってありますよね。現場でやっているからこそ気づく違和感があるのに、決定権のある人たちには届かないまま物事が動いていく。言ったところで面倒ごとになるだけだし、結局「黙って合わせるしかないのか」とモヤモヤが残るあの感じです。 『アポロ18号の殺人』の抜粋を読んだとき、多くの人が保存したのはまさにそのモヤモヤと重なる部分だと思いました。命がけの宇宙飛行士でさえ、舞台裏の判断には逆らえない。その構図があまりにリアルで、フィクションなのに現実の職場を見ているようでした。ただ、この本が面白いのは、その“力関係の歪み”が物語の緊張感を生むだけでなく、登場人物たちがどう折り合いをつけて動いていくのかが丁寧に描かれているところです。 読み進めるほど、「自分ならどう判断するだろう」と自然に考えさせられます。権限がなくてもできるリスク管理の仕方とか、伝えても通らない前提の中でどう振る舞うかとか、現実の仕事に置き換えられる場面が多いんです。宇宙という極端な環境だからこそ、普段の職場では見過ごしてしまう“判断の裏側”がくっきり見えてくる感覚があります。 組織の中で意思決定の重さに疲れた人、あるいは「現場の声ってどこまで届くんだろう」と感じている人には特に刺さるはずです。フィクションとして普通に面白いのに、読み終えたあとに自分の働き方をそっと振り返らせてくれる、そんな一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
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