
みんなが手話で話した島 (ハヤカワ文庫NF)
ノーラ エレン グロース and 佐野 正信
早川書房 / 2022-10-04
この本について
日常で「配慮しているつもりなのに、どこか線が引かれてしまう感じ」を覚えることがあって、どうしたら本当の意味で人と混ざれるんだろう、と考えることがあります。相手の事情を理解しようとしても、どこか“こちら側の前提”が残ったままになるというか、意識だけでは越えられない壁ってありますよね。 『みんなが手話で話した島』を読んで驚いたのは、島民が“特別な支援”をしたわけではないのに、聾者が社会に完全に溶け込んでいたという事実でした。出生記録にさえ聾者であることを書く必要がなかったというのは、立派な理念ではなく「そうするのが当たり前だった」から。健聴の人が自然に二言語を使うようになったのも、「適応してあげる」のではなく、一緒に暮らすうちにそうなっただけ。読んでいると、変わったのは聾者ではなく“社会の側”だったことに気づかされます。そこが、今の世界と決定的に違うところでした。 この本の何が効くかというと、まず「障害者に合わせるとはどういうことか」という抽象的な議論が、具体的な生活の風景として見えてくること。そして、共同体が少し変わるだけで孤立が消えていく過程が、理屈ではなく実例として理解できること。さらに、自分も知らぬ間に“適応の負担を相手に押しつけていたかもしれない”という視点の転換が静かに起きます。 他者との距離感にいつも迷う人に刺さる一冊だと思います。私自身、読後しばらく島の空気が頭から離れませんでした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの41%が集中しています。
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