
フッサール 志向性の哲学
富山 豊
青土社 / 2023-03
この本について
仕事でも私生活でも、同じテーマについて何度も考えているのに、どうしても掴みきれない感じが残ることがあります。相手の意図を読んだつもりでも少しズレるとか、考えている対象が霧のように形を変えてしまうとか。その「ズレ」が自分の集中力の問題なのか、そもそも認識ってそういうものなのか、判断がつかないまま放置してしまいがちです。 『フッサール 志向性の哲学』を読むと、このモヤモヤが少しだけ言葉になる感覚があります。フッサールは、私たちの思考や知覚はいつも「何かに向かう」働きだと説明します。でも同時に、その対象を丸ごと掴むことはできず、必ず取りこぼしが生じる。この“向かい続けるけれど捉えきれない”という構造そのものが、人間が世界と関わるときの前提なんだと考えるわけです。抜粋にもあるように、同じ対象に関わり続けられるのは、むしろ完全には掴めないからこそ。あの感覚に理由があるとわかるだけで、自分の思考の揺らぎと少し仲良くなれます。 さらに、実在しないものでも私たちは像として受け取り、対象があってもなくても作用は動くという話は、思考そのものの仕組みを丁寧に見ていく感覚があります。意味と表現の結びつきをどう扱うか、曖昧な対象にどう向かうかなど、日々のコミュニケーションの戸惑いにも地味に効いてきます。 抽象的な議論ではありますが、自分の「考える」という動きの癖を理解したい人にはしっくりくる本です。特に、物事との距離感にいつも微妙なズレを感じている人に。
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ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの36%が集中しています。
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