
推しの殺人 (宝島社文庫)
遠藤かたる
宝島社 / 2024-02-06
この本について
日々やることに追われていると、自分の時間がどれだけ損なわれているのか、ふと考えることがあります。誰かの都合に振り回されたり、理不尽な力関係に押しつぶされそうになったり、後から「なんであの時あんな空気に従ってしまったんだろう」と思い返すような場面も多いですよね。頭ではわかっていても、現場ではうまく立ち回れない。そのしんどさは、けっこう根深いものだと思います。 『推しの殺人』が刺さっている人の抜粋を見ていると、その「根深さ」を真っ向から描いているところに反応しているように感じました。とくに、構造としての弱さや不条理を突きつけられる感覚。誰かの機嫌や都合に支配され、気づけば自分の選択肢が細っていくあの息苦しさ。本書では、それが日常の些細な会話や、五分遅れただけで“合計十五分損した”と言われるような細かな支配関係として積み重なっていきます。そういう描写が妙にリアルで、読んでいて他人事にできません。 もうひとつは、「戻りたい道はもう失っている」という感覚です。振り返ればもっと早く気づけたかもしれないし、別の選択肢もあったかもしれない。でも、今はもう進んでしまった道の上で答えを出すしかない。あのどうしようもない手遅れ感を、本書は静かに、でも鋭く描いていて、そこに救われる人もいるはずです。誰かを責めるというより、自分がなぜそこに立ち尽くしてしまったのかを理解するための物語として読めます。 理不尽に飲み込まれやすい構造の中で、自分の感情をうまく言語化できないまま生きてきた人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
読書の順序
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