
むらさきのスカートの女 (朝日文庫)
今村 夏子
株式会社朝日新聞出版 / 2022-06-07
この本について
人のことをじっと見てしまう時ってありますよね。理由はないけど気になって、放っておけなくて、でも自分の生活はどこか空洞っぽいまま進んでいく。仕事でも、誰に迷惑をかけているわけじゃないのに疎外感だけが積み上がって、気づけば「私ってここにいる意味あるんだっけ」みたいな感覚になることがあると思います。 『むらさきのスカートの女』は、そんな“存在の居心地の悪さ”みたいなものを、変にドラマチックにせずに描き切ってくれる小説でした。語り手が誰より孤独なのに、妙に生活感のある行動ばかりしているところも、むらさきのスカートの女を観察するうちに自分との境界が曖昧になっていくところも、読んでいると「わかるなあ…」と静かに刺さってきます。特に、誰かを観察しているつもりで、実は自分の欠けた部分をのぞき込んでいるだけなんじゃないか、という気づきは、この本ならではでした。 もうひとつ、この作品が効いてくるのは「普通に生活しているだけなのに、いつの間にか人生がズレていく感じ」を丁寧に拾ってくれるところです。商店街でパンを買う、ベンチに座る、バスに乗る──そんな単純な行動が、語り手の孤独と執着を少しずつ浮き彫りにしていく。読んでいると、自分の毎日のルーティンもどこか別の意味を帯びて見えてきて、ちょっとだけ視点がズレる瞬間があります。 「人との距離感がいつもうまくつかめない人」「自分の世界にこもりすぎる癖がある人」には、特に静かに響く一冊だと思います。無理に元気づけようともしないし、人生を変えるとも言わない。でも、読んだあとに自分の孤独の正体が少しだけ輪郭を持つような、不思議な読書体験でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
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